売れたのに、守れなかった。ワヨー株式会社が教えてくれた「特許の本当の役割」

ヒット商品が生まれると、本来なら喜びしかないはずです。
しかし、成功の裏側には「ヒットしたからこそ起きるリスク」もあります。
ワヨー株式会社(東京都)が経験したのは、「売れたその先」にある、もう一つの現実でした。
店頭のPOP広告に使うクリップ。
30年以上前に同社が開発したこの小さなツールは、売り場で大ヒットし、同社の主力商品に育ちました。
ところがその後、ライバル企業が類似品を製品化し、なんと特許まで先に取得。
ワヨーは逆に「販売停止」を求めて訴えられてしまいました。
さらに、そのクリップは米国でも人気となり、1年間で2億円を売り上げるほどの成功を収めました。
しかし、ここでも特許を取っていなかったため、安価な模倣品が市場を席巻し、撤退を余儀なくされました。
努力が実を結んでも、「守る仕組み」がなければ奪われる。
ワヨーの経験は、この現実を痛烈に教えてくれます。

特許情報を「攻め」に使う会社へ
この経験を経て、ワヨーは大きく変わりました。
新商品の開発段階から、J-PlatPatを使って他社の出願状況を徹底的に分析。
市場の規模や参入障壁を見極めたうえで、どの技術に出願するかを判断しています。
特許を出願する際は「審査請求前提」。
出願だけで終わらせず、「特許出願中」であることも積極的にPRし、他社牽制として活用。
また保有特許は「持ち続けること」を目的とせず、約10年ごとに棚卸しを実施。
価値を生まなくなった特許はあえて放棄し、権利維持費を未来に投資する判断をしています。
さらに、大手メーカーとの共同開発では、特許を受ける権利をあえて顧客側に譲渡。
その代わりに専用実施権をもらい、長期的な取引関係を築く戦略を採用しています。
特許を「取得する技術」ではなく、「経営の武器として使う技術」へ。
ワヨーはまさにこの転換を実現した企業です。
特許をPRするだけで、信頼は強くなる
ワヨーは、取得した特許や「特許出願中」の表示を製品カタログに必ず記載しています。
それは単なるアピールではありません。
・ 模倣品対策
・ 顧客の安心材料
・ 金融機関からの評価向上
という信用の後ろ盾になるからです。
特許=難しい制度ではなく、特許=ビジネスの信用を支えるインフラ。
これは中小企業にとっても大きな示唆があります。
弁理士バードの視点
ワヨーの事例が示す一番のポイントは、成功の後にリスクは訪れるということです。
特許は「勝ち続けるための保険」であり、同時に「攻めの道具」でもあります。
・ 作る前から調べる
・ 出すなら審査請求までセット
・ 権利の棚卸しをする
・ 特許の持ち方で取引関係を強くする
・ PRに使って信頼に変える
どれも大企業だけの戦略ではありません。中小企業こそ「小さな一歩」が大きな差になります。

羽鳥国際特許商標事務所より
ワヨーの事例が伝えているのは、「いい技術というだけでは守れない」という現実です。
特許は取得するだけでは価値になりません。
「どの技術に出願するのか」「どうPRするのか」「どの権利を残し、どれを手放すのか」
これらを経営の中で考え続けることで、はじめて事業を支える武器になります。
私たち羽鳥国際特許商標事務所は、技術やアイデアが長く活かされるよう、出願から活用戦略まで一貫して支援します。
技術を未来につなぐ特許戦略、いつでもご相談ください。
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この記事は、特許庁発行
『知的財産権活用企業事例集2018
~知恵と知財でがんばる中小企業52~』を参考に作成しています。