羽鳥国際特許商標事務所

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偽物からブランドを守る。「高崎だるま」が法律の壁を越えた、特別な知財戦略

皆さんは「高崎だるま」を知っていますか?

「だるま」と聞いて、皆さんはどんな姿を思い浮かべるでしょうか。

赤い体に、キリッとした表情。選挙の当選報告や、受験シーズンの神社で見かけるあの置物です。

実は、日本で見かけるだるまの大多数が、群馬県高崎市で生まれていることをご存知ですか?
年間約90万個が出荷され、全国のシェアの多くを占めているのが「高崎だるま」です。

その特徴は、なんといってもお顔にあります。 眉毛は羽を広げた「鶴」、鼻から口髭にかけては「亀」を表現しており、お顔の中に日本ならではの縁起の良さがギュッと凝縮されているのです。

さて、この「高崎だるま」という名前。実は、法律(商標権)によってしっかり守られていることを知っていましたか?

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「商標権」ってなに?

「商標権」とは、商品やサービスの「名前」や「マーク」を、自分たちのものとして独占的に使える権利のことです。

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引用:特許庁「2022年度知的財産権制度入門テキスト 第4節 商標制度の概要 商標とは」

皆さんがお買い物をするとき、「このマークがついているから、いつものあのメーカーの商品だ」と商品を選んでいませんか?
商標は、いわば「ブランドの信頼を保証する証」のような役割を果たしています。

今回ご紹介する高崎だるまも、商標登録 第5003697号として、第28類の「群馬県高崎市及びその周辺地域産のだるま」という商品において、名前が守られています。

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J-PlatPatより引用

「自分たちの商品も、こんな風に名前を登録すればいいんだな」と思われた方もいるかもしれません。

ところが、いざ登録しようとすると、商標の世界ならではの「法律の壁」が立ちはだかることがあるのです。

「地名+商品名」は、本当は登録できない?

商標の世界には、「地名」と「商品名」を組み合わせただけの名前(例:高崎+だるま)は、原則として誰も独占できない(登録できない)、という大きなルールがあります。

なぜでしょうか。 想像してみてください。

もし、特定の個人や一社が「高崎だるま」という名前を独占してしまったら、高崎市で長年だるまを作り続けている他の職人さんたちが、「高崎だるま」という名前を使って、だるまを売ることができなくなってしまいます。

地名はみんなのものですから、誰か一人が独占するのは不公平だ、というのが法律の考え方なのです。

でも、もし誰かが適当に作っただるまを「高崎だるま」として売ったとしたら?

「高崎だるま」だと思って買ったら実は偽物だったなんて、逆に縁起が悪いですよね。この難しいジレンマを解決したのが、ある特別な制度でした。

地域のみんなで守る「地域団体商標」

そこで登場するのが、「地域団体商標」という特別な制度です。

一人が独占するのはダメでも、「地域の組合(団体)が管理して、その地域で頑張っているみんなで使うならOKですよ」という仕組みです。高崎だるまの場合も、「群馬県達磨製造協同組合」という団体が権利者となっています。

これにより、次のような「良いこと」が生まれます。

・偽物を防ぐ
高崎以外で作られただるまが勝手に「高崎だるま」と名乗るのを法的に止められます。
品質を守る
組合の伝統技術を守る「本物」だけが名前を使えるので、ブランドの質が保たれます。
信頼をつなぐ
消費者の皆さんは、安心して「本物の高崎だるま」を手に取ることができます。

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詳しい制度の仕組みについては、特許庁のホームページで詳しく解説されています。
参照:特許庁|地域団体商標制度

「七転び八起き」の精神を、知財で支える

先日、日本弁理士会の広報誌「パテントアトーニー」Vol.121にて、この高崎だるまの事例が紹介されました。

弊所が商標管理をお手伝いしているこのブランドが、専門家の間でも「知財を上手く活用している例」として注目されるのは非常に嬉しいことです。

だるまの精神を象徴する言葉に「七転び八起き」があります。 いくら転がしてもすぐに起き上がるその姿は、どんな困難にも屈しない「落ち着いた心」と「揺るぎない忍耐力」を象徴しているといわれます。

ブランドを運営していく中では、市場の変化や偽物の出現といった「転倒」の危機は常にあります。
しかし、商標権というしっかりとした「重心」が据わっていれば、ブランドは信頼を失うことなく何度でも起き上がり、輝き続けることができるのです。

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終わりに:100年先へバトンをつなぐために

地域の特産品を商標で守ることは、単なる権利の主張ではありません。

それは、江戸時代から200年かけて先人たちが築き上げてきた「信頼」というバトンを、次の100年も安心して愛されるブランドとして整え直す「未来への投資」です。

「高崎だるま」がこれからも、日本中で、そして世界中で皆さんの願いを叶えるパートナーであり続けるために。

私たちはこれからも、専門的な知見からその歩みを全力でサポートしてまいります。

群馬県を拠点にする当事務所は、特許・意匠・商標などの知的財産権に関する豊富な実績を持つ弁理士が対応いたします。

知財に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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所長/弁理士  羽鳥 亘

副所長/弁理士 羽鳥 慎也

弁理士     柿原 希望