羽鳥国際特許商標事務所

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氏名(フルネーム)の商標登録が容易になりました!

今年の4月1日から、他人の氏名を含む商標の登録要件(商標法第4条第1項第8号)が緩和され、氏名(フルネーム)の商標登録が容易になりました!

今までは、同姓同名の他人が存在している場合、その方の承諾がないと、その氏名の商標登録はできませんでした。この規定は、自らの承諾なしに、その氏名を商標に使われることがないよう、人格的利益を保護するために設けられていました。そのため、電話帳やSNSをはじめ、各種刊行物から同姓同名の他人が存在していることが確認できるような場合、事実上、フルネームでの商標登録は難しいという事態が続いていました。

しかし、全国誰でも知っているようなドラッグストアの人名で構成される店舗名や、世界的に活躍しているファッションデザイナーの氏名でさえも、有名ではない同姓同名の他人が存在していることを理由に、商標出願が拒絶されてしまうことが、近年問題になっていました。

そんな中、令和2年に「マツモトキヨシ」の音商標について、商標登録が認められる画期的な知財高裁判決が出ました。その中で、この商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人格的な利益を保護することと、出願人側の商標登録を受ける権利との調整を図るものだという判断がなされました。また、取引の実情に照らし、音商標に接した者が、普通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められるか否かを、「他人の氏名」を含む商標にあたるか否かの判断基準とすべき旨も判示されました。

これを受けて、要件緩和のために法改正が行われることとなりました。今後はその氏名が有名かどうか審査されます。もし同姓同名の他人が有名な方でなければ、承諾は不要になり、無関係な者による出願や不正の目的を有する出願でないことが確認できれば、商標登録ができるようになります。

過去に自分の氏名を商標出願したものの拒絶された、という方も再チャレンジすることができます。現在でも自分の氏名を商標として使用している方々は、改めて商標出願することをお勧め致します。

なお、この規定は現在生きている方の氏名についてのものですので、歴史上の人物名に係わる出願についてはこれまでどおりの扱いです。つまり、「織田信長」「豊臣秀吉」「徳川家康」などの歴史上の人物名を勝手に出願しても、「無関係の人が歴史上の人物名を商標出願することは公序良俗に反する」と判断されて、原則として拒絶されますので、ご注意ください。

羽鳥国際特許商標事務所

弁理士 柿原希望