羽鳥国際特許商標事務所

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「自分のアイデアだから大丈夫」と思う前に!特許出願で重要な「新規性」を弁理士が解説

こんにちは。羽鳥国際特許商標事務所 副所長・弁理士の羽鳥慎也です。

「画期的なアイデアを思いついたので、SNSで先に発表してから特許を取ろうと思います!」

もしあなたがこう考えているなら、少しだけ立ち止まってください。
その投稿をした瞬間、特許が取れなくなる可能性があります。

特許取得の最初の関門となるのが「新規性(しんきせい)」というルールです(特許法29条1項)。

聞き慣れない言葉ですが、ここでつまずいてしまう発明者の方が本当に多いのです。

実務で日々ご相談を受ける中で「もっと早く知っておけば……」と多くの方がおっしゃるこの新規性について、

できるだけ身近な言葉で整理してみます。

新規性とは「まだ世の中に出ていないか」を問うルール

新規性とは、ひとことで言えば「出願した発明と同じものが、すでに世の中に知られていないか」を問うルールです。

たとえば、便利な調理器具を思いついて「特許を取りたい!」と思っても、

すでに同じような商品が昔の雑誌で紹介されていたら、原則として特許は取れません。

「他人が先に出していたものがあるかどうか」
シンプルに言えばそういう話に聞こえますよね。

ところが、新規性の本当の落とし穴は、別のところにあるのです。

落とし穴は「自分自身の発信」

ここで特に注意していただきたいのは、他人の情報だけが問題になるわけではないという点です。

自分が発信した情報であっても、出願前に世の中に出てしまえば「公知」として扱われ、新規性が失われる可能性があります。

具体的には、次のような行為がすべて該当しえます。

・ 自分でSNSに投稿する
・ 自社サイトやブログで紹介する
・ 展示会・見本市で公開する
・ 学会やセミナーで発表する
・ 論文・カタログ・パンフレットに掲載する
・ クラウドファンディングで先行公開する
・ 商談資料などに技術内容を記載する

「自分のアイデアだから、自分でどう扱おうと自由なのでは?」
そう思われる方は本当に多いのですが、
特許の世界では「誰が出したか」ではなく「出願前に世の中に出ているかどうか」が決定的に重要なのです。

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【条文メモ】 特許法29条1項の3類型

新規性が否定される類型は、特許法29条1項1〜3号に定められています。
・1号 : 公然知られた発明(例:テレビ放映、口頭発表など)
・2号 : 公然実施をされた発明(例:店頭販売、誰でも見学可能な製造工程など)
・3号 : 頒布された刊行物に記載された発明、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
(例:書籍・論文・特許公報・Webサイト・SNS投稿など)

現代では特に3号の射程が広く、SNS投稿1つでも該当しうる点に注意が必要です。

なぜこんなルールがあるのか

少し背景もお話しします。

特許制度は、新しい技術を世の中に公開した発明者に対して、その代わりに一定期間の独占権を与える制度です。
つまり、「世の中にまだ無い新しい技術」を公開してくれた人へのご褒美という性格を持っています。

すでに世の中に出ている技術に独占権を与えてしまうと、誰でも自由に使えていたものが急に使えなくなってしまいます。

これでは社会全体にとって不利益です。

だからこそ、「誰が出したか」を問わず、「出願前に世の中に出ていたか」という客観的な事実で判断されるのです。

実は救済制度もあるけれど

「では、すでに発表してしまったらもう諦めるしかないのか?」

そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、「新規性喪失の例外」という救済制度があります(特許法30条)。
一定の条件を満たせば、自分で公開してしまった後でも、その公開がなかったものとして審査してもらえる場合があるのです。

ただし、この制度には厳格な要件があります。

・ 公開から1年以内に出願する必要がある
・ 出願時に所定の手続き(証明書の提出など)が必要
・ 外国出願では使えないこともある(国によって制度が異なる)
・ 第三者が独自に同じ内容を公開していた場合は救済されない

つまり、この救済制度は「最後の手段」であって、最初から頼るべきものではありません。

何より、海外展開を視野に入れている場合、日本と同じような救済を受けられるとは限りません。

国によって制度や要件が異なるため、特に注意が必要です。

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【条文メモ】特許法30条のポイント

30条は、(1)権利者の意に反して公知となった場合(1項)と、(2)権利者自身の行為により公知となった場合(2項)の双方を救済対象としています。
ただし、適用を受けるには、出願時の主張+30日以内の証明書提出が必要です。手続きの漏れや海外出願との関係を考えると、やはり「発表前の出願」が王道です。

だからこそ「公開する前」のご相談が鍵になります

ここまでお読みいただければ、新規性で大切なのはタイミングだということがお分かりいただけたと思います。

どれだけ優れたアイデアでも、

・販売してしまった
・SNSや自社サイトで発表してしまった
・展示会や補助金申請の資料に書いてしまった

こうした後では、特許取得のハードルが一気に上がってしまいます。

おすすめのご相談タイミング

・ 製品を販売する前
・ Webサイトや SNSで発信する前
・ 展示会・見本市に出展する前
・ 補助金申請で技術内容を提出する前
・ クラウドファンディングを立ち上げる前
・ 学会発表・論文投稿の前

「まだ試作品が完成していないから相談できない」と思われる方もいらっしゃいますが、その必要はありません。
むしろ、公開前・販売前のこの段階こそ、一緒に検討して対策できることがたくさんあるのです。

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羽鳥国際特許商標事務所より

特許出願は、単にアイデアを特許庁に届け出る手続きではありません。
発明のどこに技術的な工夫があるのかを専門家と一緒に整理し、
あなたのビジネスを後押しする強い権利として守るための制度です。

その入り口にあるのが、今回ご紹介した「新規性」というハードルです。

「自社製品のこのアイデア、特許になるのだろうか?」
「もう学会で発表してしまったが、まだ間に合うだろうか?」
「補助金申請の前に、何を準備しておけばいい?」

羽鳥国際特許商標事務所では、1987年の開業以来、群馬県内外の中小企業の皆さまから、特許・商標・意匠に関するご相談をお受けしてきました。
「公開してよい段階なのか」「先に出願すべき内容なのか」など、状況を整理するところからご相談いただけます。

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