羽鳥国際特許商標事務所

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徹底調査が技術革新を生んだ。新興製作所が示した「知財活用型ものづくり」

世界各地の金融機関で使われている、株式会社新興製作所の通帳記帳機。
高精度な自動ページめくり機構をはじめ、独自の技術力に定評のある同社ですが、ある時、社内でこんな声が上がりました。

「そろそろ新しいモデルを作るべきではないか?」

従来製品は発売から10年以上。
技術革新のニーズに応えるため、同社は新製品開発プロジェクトを立ち上げました。
そしてそのメンバーには、技術者や営業担当者と並んで「知財担当者」も加わったのです。

ここから同社の「知財活用型ものづくり」が本格的に動き出します。

開発チームに「知財」が入る意味

企画会議、設計検討、アイデア出し。これらすべての場に知財担当者が加わり、技術担当者や営業が持つ情報を丁寧に整理しながら、開発の方向性を一緒に検討できるようになりました。

ここで中心的な役割を果たしたのが、先行技術文献調査です。

「まず調べる」が開発を強くする。先行技術文献調査の威力

知財担当者は J-PlatPat を使い、競合製品の構造や、公知技術となっている技術を徹底的に調査します。

その結果、開発チームは次のような判断がしやすくなりました。

・ 使える技術はどれか

・ 避けるべき構造はどれか

・ 改善やコスト削減のヒントになる技術はどれか

こうして、開発の土台がより明確になり、無駄のない「強い企画」が作れるようになっていったのです。

J-PlatPat

権利侵害リスクのチェックも同時進行

もし他社特許に抵触しそうな技術が見つかった場合には、知財担当者の調査に加え、弁理士へ鑑定を依頼し、早い段階でリスクを把握します。

これは後からトラブルになることを防ぐだけでなく、万が一の係争時に備えた「証拠」としても役立ちます。

商標調査で営業が強くなる。名前づくりの裏側

新製品の名称案は、営業担当者を中心に社内で次々と検討されますが、商標として登録できなければ採用できません。

そこで知財担当者が候補名を事前に調査し、問題のない名称を選んで出願しています。
「せっかく考えた名前が他社商標と衝突して使えない」という事態を防ぐためです。

営業担当者からは、「他社の登録商標に抵触しないように社内で検討できるので、決まった名前により思い入れを持って営業できる」という声も上がっており、名前づくりの段階から知財が関わることで、安心して使える「自社の名前」をチーム全体で育てていける環境が整っています。

新製品が見せた「知財を活かす開発」の成果

新型通帳記帳機S4880 新興製作所HPより引用

こうした地道な調査と検討を積み重ねた新製品は、具体的な成果として表れました。

・ 製品サイズの小型化

・ 待機時・動作時の消費電力削減

・ インクリボン寿命の向上

特に、自動ページめくり機構には新しい独創的な構造を採用し、すでに特許も取得しています。

弁理士の視点で見ると

新興製作所の取り組みは、「知財を“後付け”ではなく“設計段階に持ち込む”強さ」を示しています。

・ 先行技術調査

・ 公知技術の活用

・ 権利侵害リスクの早期発見

・ 商標の事前調査

これらをひとつひとつ丁寧に積み重ねることで、開発スピードと安全性、そして事業の拡張性がすべて高まります

「知財はコストではなく投資である」──この言葉を体現する好例です。

羽鳥国際特許商標事務所より

今回の事例のように、新製品開発の早い段階から知財を組み込むことは、企業の競争力を大きく左右します。

当事務所では、
・先行技術調査
・特許侵害リスクのチェック
・商標の事前調査
・海外出願支援
など、開発フェーズに合わせた知財サポートを提供しています。

新しい挑戦を進めたい企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事は、特許庁発行
『知的財産権活用企業事例集2018
~知恵と知財でがんばる中小企業52~』
を参考に作成しています。