羽鳥国際特許商標事務所

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有名になりすぎた商標は、なぜ危ういのか?味の素株式会社に学ぶ「普通名称化」を防ぐ知財の姿勢

「味の素」という言葉を聞いて、特定の商品を思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし実は、ここまで広く浸透した名称ほど、商標としての価値を失う危険を抱えています。

今回取り上げるのは、味の素株式会社の事例です。
同社は、110年以上の歴史の中で、「味の素®」という看板ブランドを育てる一方、
普通名称化という見えにくいリスクと長年向き合ってきました。

分かりやすい名前が生んだ「普通名称化」の危機

味の素株式会社 商品紹介ページより引用

「味の素®」は、うま味という新しい価値を、誰にでも伝わる言葉で表現した商標です。
その分かりやすさは、商品の普及に大きく貢献しました。

一方で、「しょう油」や「味噌」のように、調味料の種類そのものとして受け取られてしまう場面も生まれました。
これが、商標実務でいう 普通名称化 です。

普通名称とみなされると、商標として独占できなくなる可能性があります。
つまり、有名になるほど、ブランドは壊れやすくなるのです。

守ったのは「登録」ではなく「使い方」

味の素株式会社が取った対策は、派手なものではありません。
しかし、どれも一貫して 「使い方を正す」 ことに向いていました。

・ 商標の表示方法を定めた社内規程の整備

・ 社内セミナーによる継続的な周知

・ 「うま味調味料(Umami Seasoning)」という普通名称の普及

・ 登録商標であることを外部に明示

・ 誤解を招く表現への訂正要請

これらはすべて、
「味の素®はブランド名であり、一般名称ではない」 という認識を、社内外に根づかせるための取り組みです。

味の素株式会社 登録商標紹介ページより引用

商標を「会社の文化」にした結果

重要なのは、これらが一時的な対応ではなかったことです。

長年の積み重ねによって、

「社員が自社ブランドを意識して扱う」 「表記や訴求に自然と注意が向く」 という風土が醸成されました。

商標は、法的な権利であると同時に、組織の姿勢そのものでもあります。
味の素株式会社では、その意識が無形資産として社内に根づいていったといえるでしょう。

こうした一連の取り組みが評価され、同社は2013年に知財功労賞を受賞しています。

弁理士の視点で見ると

この事例から読み取れる最大の教訓は、「商標は、登録してからが本番」 という点です。

特に、

・ わかりやすい名前

・ 大ヒット商品

・ 長く使われるブランド   ほど、普通名称化のリスクは高まります。

「誰もが知っているから安心」 ではなく、
「誰もが使うからこそ危ない」 その感覚を持ち続けられるかどうかが、ブランドの寿命を左右します。

羽鳥国際特許商標事務所より

ブランドが育つと、名前の使われ方や、第三者の表現まで気にする必要が出てきます。

羽鳥国際特許商標事務所では、商標を取るだけで終わらせない視点から、
ブランドの使い方・守り方まで含めた知財支援を行っています。

「この名前、広まりすぎていないか」
「正しく伝わっているか」
そんな違和感を覚えたときは、早めの確認が有効です。

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この記事は、特許庁発行
『商標の活用事例集「事例から学ぶ 商標活用ガイド」
– ビジネスやるなら、商標だ!(2024年版)』を参考に作成しています。