羽鳥国際特許商標事務所

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商標登録完了のあとに待っている「最後のチェック」とは? ~『商標異議申立制度』をわかりやすく解説~

商標登録、誠におめでとうございます。

商標登録、ついに完了しましたね。

「これで長い審査待ちから解放された」「手続きはすべて終わった」と、ホッと胸をなでおろされている頃ではないでしょうか。

登録証が手元にあれば、もちろん商標権はあなたのものです。それは間違いありません。
ただ、実はあと一段階、「最後のハードル」が残っていることをご存知でしょうか。

それが、商標公報の発行日から2ヶ月間行うことができる「異議申立(いぎもうしたて)」という制度です。

映画の結婚式で見る「あのシーン」と同じ?

映画やドラマの結婚式のシーンを思い浮かべてみてください。

神父さんが誓いの言葉の前に、参列者に向かってこう言いますよね。
「この結婚に異議のある者は申し出よ。」

……シーンと静まり返る教会。 ここで、教会の扉がバーン!と開いて、「ちょっと待った!!」と誰かが乱入してくる。

実は商標登録にも、これとまったく同じ仕組みがあるんです。

特許庁の審査官という「神父さん」が、「この商標を認めます」と宣言し、登録証(結婚証明書)も発行されました。
しかし、その情報が『商標公報』という官報に載ってから2ヶ月間だけは、「ちょっと待った!」を受け付ける期間になっているのです。

異議申立制度ってこんなイメージ

なぜ、そんな制度があるのか?

せっかく登録されたのに、なぜそんな期間があるのでしょうか。 「登録をひっくり返して、あなたを困らせるため」ではありません。本来の目的は、審査の間違いを正し、公平性を保つことにあります。

通常の商標審査は、一人の審査官が判断を行います。人間ですから、どうしても偏った判断になったり、その審査官が知りえなかった事情があったりするかもしれません。

たとえば、

 ・ 特定の業界内では誰もが知っている名称だった(本来は独占できないはず)

 ・ すでによく似た商標が使われていた

こうした事情は、現場を知る第三者のほうが詳しい場合があります。 そのため、一人の審査官の判断だけで終わらせず、社会の目を通した上で、最終的に三人の審判官の合議体でもう一度チェックできるようにしているのです。

あなたの商標登録に異議申立がされた場合、その後どうなるのか

では、実際にあなたの商標登録が異議申立を受けた場合、どのようなことが起こるのでしょうか?


異議申立がなされたからといって、その時点ですぐにあなたの商標登録が取り消されるわけではありません
特許庁が申立の内容を確認し、登録を維持すべきか、見直すべきかを審理したうえで判断が行われます。

特許庁が判断する結論は、大きく分けて次の2つです。

① 商標登録を維持すべきと判断された場合

審査に間違いはなく、「取り消すべき理由はない」と判断した場合には、商標登録はそのまま有効なものとして扱われます(これを「維持決定」といいます。)。

これ以降は、異議申立によって登録に異議を唱えることはできず、登録を取り消したい場合には、別の手続(無効審判など)を利用する必要があります。(無効審判については記事で詳しく解説したいと思います)

② 商標登録を見直すべきと判断された場合

特許庁が「この商標登録には、見直すべき理由がある」と判断すると、あなた(もしくは代理人)に対して、「取消理由通知」が送られ、あなたには反論の機会が与えられます。

あなたの反論が特許庁に認められ、やはり登録が維持されるべきと判断されれば、①の時と同様、登録維持の決定が出されます。

一方、あなたの反論が認められず、なお見直すべきと判断された場合には、あなたの商標登録が取り消されることになります。
この場合、取り消された範囲については、最初から商標権がなかったものとして扱われます。

実際にはどうなのかというと

異議申立の流れについて解説しましたが、実際には、すべての商標登録に異議申立がされるわけではありません。

統計を見ると、2024年に行われた異議申立は約300件。年間の登録件数は約13万件ですので、異議申立を受ける確率はわずか0.23%です。

出典:特許行政年次報告書2025年版

つまり、独自性の高い名称や、他人の権利と衝突しにくい商標であれば、異議申立をされないまま何事もなく2ヶ月が経過するケースがほとんどなのです。

もちろん、すでに有名な商標と似ている場合などは異議申立の対象となることもあります。

とはいえ、過去10年間のデータ(申立数4132件)を見ても、実際に取り消されたのはわずか449件。残りの約80%は登録が維持されました

「異議申立をされた=終わり」ではなく、むしろ取り消されることの方が少ないと言えます。

そもそもこの制度は、審査の間違いを正し、商標登録に対する信頼を高めるという「公益的な目的」のためのものです。

そのため、「勝手に商標登録された」といった当事者同士のトラブルについては、ここではなく「無効審判」で争うのが一般的となっています。

まとめ

「異議申立」という制度についてお話ししましたが、結論としては、過度に心配する必要はありません。

確率から言っても、ほとんどの商標は何事もなくこの期間を通過します。 どうぞ自信を持って、ビジネスで商標を活用してください。

ただ、万が一特許庁から通知が届いた場合は、スピード勝負になります。 「取消理由通知」が来てからではなく、最初の通知が届いた段階ですぐに弁理士にご連絡ください。 反論の準備期間を最大限に確保し、あなたの大切な商標を守るために全力を尽くします。

群馬県を拠点にする当事務所は、特許・意匠・商標などの知的財産権に関する豊富な実績を持つ弁理士が対応いたします。

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所長/弁理士  羽鳥 亘

副所長/弁理士 羽鳥 慎也

弁理士     柿原 希望